ハイ・ファイ・セット「Ceramic Smile」
ハイ・ファイ・セット「Ceramic Smile」(1987年/CBSソニー)
作詞:小泉 亮、作曲:山本俊彦、編曲:新川 博
リズム、ベース、ブラス、ギターのカッティング…全ての音にエッジが効いている。リズムがシンプルな部分ではベースとボーカルが動きまわり、一方でパートが減る部分ではキックが連打されるなど、シンプルながらパートの入れ替わりが多用されている。全てのパートがグルーブ感を支えており、何か一つ抜けてもこの心地よさは出せないと思われるところが秀逸。
Especia「No1 Sweeper」
Especia「No1 Sweeper」(2014年/つばさレコーズ)
作詞:mirco、作曲:Schtein&Longer、編曲:Schtein&Longer
Especiaを初めて聞いたときの感想は「Gwinko+少女隊÷2」であった。メロディはアイドル系の歌謡曲に近いが、素晴らしいリミキサーの方々に恵まれ、テクノやファンクを取り入れた音は新鮮であった。1曲選ぶのは悩んだが、エレクトロ・ビートに近い本曲にした。
スネアは軽めであまり目立たない。頻繁に鳴るキックがリズムパートの主役である。このキックがギターのカッティングのような音と絡み合い心地よいグルーブ感を作っている。シンセの合いの手も絶妙なタイミングで曲の終わりまでまではあっという間である。
CoCo「春・ミルキーウェイ」
CoCo「春・ミルキーウェイ」(1990年/PONYCANYON)
切なげなシンセ・リフ。限界まで音を削ぎ落としたスネア。リズムなのかシンセなのか判然としないシーケンスフレーズ。これだけでグルーブ感は十分なのだが、忽然とベースが割り込んでくる。16ビートで無節操に動き回るアシッドアウス調のベースが、この曲を一層進化させている。編曲の西脇氏の力が遺憾なく発揮された一曲である。
【番外編】DJミキサー「Vestax DSM310 pro」
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さて、今回は曲の紹介から離れ、DJミキサーを紹介したいと思います。
そのミキサーとは、1980年代に発売された(と思われる)、Vestaxの「DSM310 pro」です。
本ブログで取り扱っている曲の多くが1980年代後半のものであるため、同時期に使用されていたミキサーを紹介することもあながちブログの趣旨から外れたものではないと考えた次第です。
このミキサーは音が独特で、張りがあるというかほんの少し割れたような感じになるのですが、そこが心地よく、今でも電源を入れたくなる不思議な魅力があります。一般的には、低音~中低域の出音を気に入っている方が多いようです。
phono(レコード)入力と、LINE(CD等)入力が各2チャンネルあり、いずれも同じような空気になるのですが、LINE入力でSeratoやCDJの音をあえて「汚す」ことで特徴的な(張りのある)心地よいサウンドにすることができます。
ちなみに私はかつてPMC-46mk2に乗り換えた際「便利になったけど音に面白味がなくなったな」と少々がっかりしたことを覚えています。
このDSMシリーズ、一時期はネットオークションで1000円くらいで入手できたことから、DSM310 proのほか、DSM310Bや、ノーマルのDSM310など全部で10台以上所持していたこともあったのですが、音としては「pro」が最も心地よいと思われます。とはいえ、ノーマルのDSM310でも特徴的な低音は十分に楽しめます。なお、検証するだけのサンプル数がなかったため、型番の特徴なのか個体差なのか不明ですが、ノーマルのDSM310のうち、「Vesta小僧」と書かれたものについては音がスッキリとまとまっている分、迫力がないように感じました。
と、このように書くと世のDSM310愛好家の皆様が「なんてことを書くんだ、これでは中古価格が上がってしまう」と思われるかもしれませんが、ご安心ください、本機種には以下のように構造上の致命的欠陥があり、現代のDJミキサーとして使用するには全く不適切です。むしろ、こういったミキサーを使用して練習すると変な癖がついて後でものすごく苦労しますので、DJ目的の方は素直にパイオニアのミキサーを買ってください。
(DSM310の欠点)
①縦フェーダーを上げていないとモニターができない。ミックスするならクロスフェーダー必須。
②しかしこのクロスフェーダーが妙なカーブでちょっとずつミックスするようなハウスならまだしも、カットインを多用する現代のDJでは使い物にならない(とはいえ、そもそもこれは「ハウスミキサー」なので仕方ない)。
③イコライザーが一基のみ(これもハウスミキサーの特徴なので仕方ない)。その上あんまり切れない。
④【proのみ】LINE2がクロスフェーダーに入っていない。BGMをただ上げ下げするくらいにしか使いみちがないため、CDJを2台接続してモニターを取りながら曲をつなぐことができない。
⑤電源が原因と思われるがとにかくノイズが乗る。最近は機材側でのノイズ対策がしっかりしているため、クラブ側のノイズ対策が徹底していないことが多い。このためこういった機材を持ち込むとびっくりするくらいノイズ(特にハムノイズ)が生じる。
⑥クロスフェーダーがとにかく重い。昔はこれでスクラッチをしていた人もいたようだが、単純にこするだけならともかく、複雑にフェーダーを動かす現代のスクラッチ技はほぼ使えない。
⑦モニター部分のボリュームが壊れやすい。壊れた場合、バリバリと音が出て使い物にならない。
以上、欠点をあげつらいました。加えて言うなら30年ほど前の商品ですから、何らかの形で入手したとしてもメンテナンスが必須でしょう。メーカーは既に倒産していますから、信頼できる修理屋さんを探す必要もあります。
こんな骨董品ミキサーを誰が使うんだと感じられたかと思いますが、
・リスニング目的で安価でそこそこの音が出るミキサーが欲しい人
にはまあお勧めできる機種ですし、
・主にレコードでロングミックスする人
であれば使えないこともないです。
また、
・この音が気に入った物好きな人(80年代後半の曲を当時の機材で聞きたい等)
には代替の利かない唯一無二の機材ということになります。
人間というものは業が深く、この音が気に入ってしまうとどうにかして現代でも便利に使用できないかと考えてしまうものです。
好事家の中には、フェーダーを上げずともモニターでき、LINE2をクロスフェーダー経由とし、その上で電源を強化したDSM310 proへと改造した方もおられるようです(上記①、④、⑤を解決)。また、レコードが不要で単にCDJが2台使えればいいという方は「逆RIAAバッファ」なるものを作り、CDJをphono入力へとつないでいる模様(RIAA等についての説明は例えばこちら。LINEの機器は単にボリュームを下げてphonoにつないでもダメというか壊れるのでやめてください)。このほか、とんでもない魔改造を施した機種を何度か目にしたことがあります。
というわけでつらつらと書きましたが、トータルで言うと「個人的には」とても気に入っているDSM310です。
強烈な個性というものは万人受けしなくても、一部の人を虜に、いや熱狂的な信者にします。これは、DJミキサーでも、エレクトロ・ファンクの楽曲でも同じなのかもしれません。
上野洋子「MORNING TIME」
上野洋子「MORNING TIME」(1991年/EMI)
メルヘンチックなオケと透明感のあるボーカルにかぶせるように緊張感のあるエレクトロ・ビートが入る。BPMが早い曲の場合スネアをタメるとかえってスピード感を削いでしまうことが多いが、この曲はギリギリのところで打ち込んでおり非常にグルーブ感がある。例えば、CylobのCut The Midrange, Drop The Bassのようなタイミングである。リズムがない部分が多くまた効果音が入ることから、フロアでは使いにくいが、DAWで編集すれば非常に可能性のある曲になるはずである。