Japanese Machine Funk

主に日本のエレクトロ・ファンク調の曲を紹介するブログです。

【番外編】DJミキサー「Vestax DSM310 pro」

 

いつも本ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

おかげさまで100記事を突破しました。思いがけずご覧いただいている方が多く、励みになっています。今後とも宜しくお願い申し上げます。

 

さて、今回は曲の紹介から離れ、DJミキサーを紹介したいと思います。

そのミキサーとは、1980年代に発売された(と思われる)、Vestaxの「DSM310 pro」です。

本ブログで取り扱っている曲の多くが1980年代後半のものであるため、同時期に使用されていたミキサーを紹介することもあながちブログの趣旨から外れたものではないと考えた次第です。

 

このミキサーは音が独特で、張りがあるというかほんの少し割れたような感じになるのですが、そこが心地よく、今でも電源を入れたくなる不思議な魅力があります。一般的には、低音~中低域の出音を気に入っている方が多いようです。

phono(レコード)入力と、LINE(CD等)入力が各2チャンネルあり、いずれも同じような空気になるのですが、LINE入力でSeratoやCDJの音をあえて「汚す」ことで特徴的な(張りのある)心地よいサウンドにすることができます。

ちなみに私はかつてPMC-46mk2に乗り換えた際「便利になったけど音に面白味がなくなったな」と少々がっかりしたことを覚えています。

 

このDSMシリーズ、一時期はネットオークションで1000円くらいで入手できたことから、DSM310 proのほか、DSM310Bや、ノーマルのDSM310など全部で10台以上所持していたこともあったのですが、音としては「pro」が最も心地よいと思われます。とはいえ、ノーマルのDSM310でも特徴的な低音は十分に楽しめます。なお、検証するだけのサンプル数がなかったため、型番の特徴なのか個体差なのか不明ですが、ノーマルのDSM310のうち、「Vesta小僧」と書かれたものについては音がスッキリとまとまっている分、迫力がないように感じました。

 

と、このように書くと世のDSM310愛好家の皆様が「なんてことを書くんだ、これでは中古価格が上がってしまう」と思われるかもしれませんが、ご安心ください、本機種には以下のように構造上の致命的欠陥があり、現代のDJミキサーとして使用するには全く不適切です。むしろ、こういったミキサーを使用して練習すると変な癖がついて後でものすごく苦労しますので、DJ目的の方は素直にパイオニアのミキサーを買ってください。

 

(DSM310の欠点)

①縦フェーダーを上げていないとモニターができない。ミックスするならクロスフェーダー必須。

②しかしこのクロスフェーダーが妙なカーブでちょっとずつミックスするようなハウスならまだしも、カットインを多用する現代のDJでは使い物にならない(とはいえ、そもそもこれは「ハウスミキサー」なので仕方ない)。

イコライザーが一基のみ(これもハウスミキサーの特徴なので仕方ない)。その上あんまり切れない。

④【proのみ】LINE2がクロスフェーダーに入っていない。BGMをただ上げ下げするくらいにしか使いみちがないため、CDJを2台接続してモニターを取りながら曲をつなぐことができない。

⑤電源が原因と思われるがとにかくノイズが乗る。最近は機材側でのノイズ対策がしっかりしているため、クラブ側のノイズ対策が徹底していないことが多い。このためこういった機材を持ち込むとびっくりするくらいノイズ(特にハムノイズ)が生じる。

⑥クロスフェーダーがとにかく重い。昔はこれでスクラッチをしていた人もいたようだが、単純にこするだけならともかく、複雑にフェーダーを動かす現代のスクラッチ技はほぼ使えない。

⑦モニター部分のボリュームが壊れやすい。壊れた場合、バリバリと音が出て使い物にならない。

以上、欠点をあげつらいました。加えて言うなら30年ほど前の商品ですから、何らかの形で入手したとしてもメンテナンスが必須でしょう。メーカーは既に倒産していますから、信頼できる修理屋さんを探す必要もあります。

 

こんな骨董品ミキサーを誰が使うんだと感じられたかと思いますが、

・リスニング目的で安価でそこそこの音が出るミキサーが欲しい人

にはまあお勧めできる機種ですし、

 

・主にレコードでロングミックスする人

であれば使えないこともないです。

 

また、

・この音が気に入った物好きな人(80年代後半の曲を当時の機材で聞きたい等)

には代替の利かない唯一無二の機材ということになります。

 

人間というものは業が深く、この音が気に入ってしまうとどうにかして現代でも便利に使用できないかと考えてしまうものです。

好事家の中には、フェーダーを上げずともモニターでき、LINE2をクロスフェーダー経由とし、その上で電源を強化したDSM310 proへと改造した方もおられるようです(上記①、④、⑤を解決)。また、レコードが不要で単にCDJが2台使えればいいという方は「逆RIAAバッファ」なるものを作り、CDJをphono入力へとつないでいる模様(RIAA等についての説明は例えばこちら。LINEの機器は単にボリュームを下げてphonoにつないでもダメというか壊れるのでやめてください)。このほか、とんでもない魔改造を施した機種を何度か目にしたことがあります。

 

というわけでつらつらと書きましたが、トータルで言うと「個人的には」とても気に入っているDSM310です。

 

強烈な個性というものは万人受けしなくても、一部の人を虜に、いや熱狂的な信者にします。これは、DJミキサーでも、エレクトロ・ファンクの楽曲でも同じなのかもしれません。